「一体、適切な睡眠時間はどれくらいなのだろうか?」
と、あなたも一度は考えたことがあるはず。
寝不足は体に良くないとよく言われているけど、寝過ぎてもボーッとして頭が働かないし…
というような経験をしたことがあるのではないでしょうか。
実は、睡眠時間が脳機能に影響を及ぼし、一日のパフォーマンスを決めてしまっていることが分かっています。
しかも、睡眠時間と年齢には関係がない。
例えば、歳を重ねるに連れ、睡眠時間が短くなっているイメージがありますが、歳をとっているから睡眠時間が少なくて良いというものでもないんです。
適切な睡眠時間の研究についてはいくつもありますが、今回は、1万人以上を対象にした大規模な研究を元に、睡眠時間と脳の関係についてお話します。
睡眠時間が人生の質を左右する
生活向上に必要な3つのもの
自分の人生をより良いものにしようとした時、この3つだけは欠かすことができないというものがあります。
それが、食事の改善、睡眠の時間と質、適度な運動です。
この3つが、生活を向上させる上で最も大切なものだと言われています。
今回は、2つ目の睡眠に関することをお話します。
この内容を知ることにより、睡眠を最適化したり質を上げたりしてより良いものにすることができ、人生が変わることが期待できるでしょう。
睡眠と脳の関係を調べた研究
朝スッキリと目覚めることができるかどうかで、一日の生活の質が決まります。
睡眠はメンタルに大きく影響することが分かっており、たとえしっかり眠れていたとしても、「あまり眠れなかった」と考えるだけで、脳機能が下がることがあるんです。
逆に、寝不足だとしても、「しっかり眠れている」と言われると、睡眠不足の症状が出ないこともあります。
このことに着目したカナダのウェスタン大学を始めとした各機関が、睡眠と脳機能について1万人以上を対象に調べました。
18歳から100歳までの数カ国(ロンドン、カナダ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、パキスタンなど)の10,886人を対象に、睡眠時間の違いによって、以下の能力がどれくらい変化するかというものです。
- 短期記憶
- 認知機能
- 問題解決能力
- メンタルヘルス(不安やうつの感じやすさ)
- 集中力・注意力
- コミュニケーション能力
など
この研究の結果を、5つのポイントに絞ってお伝えします。
覚えておくべき睡眠と脳の5つの関係
①最も適切な睡眠時間は7〜8時間
調査項目の能力が高かった人たちの睡眠時間は、7〜8時間に収まっていました。
7時間を下回っておらず、8時間を超えてもいないということです。
とりわけ、この人達の最も高かった能力は、推論能力(推理したり予測したりする能力)とコミュニケーション能力です。
逆に、短期記憶に関しては、他の人達と同じくらいでとりわけ高いというものではありませんでした。
短期記憶は問題ないが、同じミスを何度もしてしまうという場合は、睡眠不足又は睡眠過多が原因かもしれません。
なお、コロンビア大学やカルフォルニア大学、スタンフォード大学などでは、適切な睡眠時間は6.5〜7.5時間と発表しているところもあります。
なぜ微妙にずれているかというと、対象とした人数が違うから。
たいていの睡眠時間の研究では、測定器を取り付けて計測するため、少人数を対象に実験しています。
今回は、時間をかけて10,886人を研究したため、このような結果となっているのです。
7.5時間前後が丁度良い、ということを覚えておきましょう。
②寝過ぎは寝不足と同じ
寝不足だとパフォーマンスが落ちることは誰にでも想像できますが、実は、8時間を超える睡眠を数日間行うと、寝不足の時と同じくらいパフォーマンスが落ちていることがわかりました。
実験では、6時間睡眠と9時間睡眠のどちらとも、認知機能などの低下が見られたのです。
(ただし、ここでは睡眠障害などの睡眠の質は考慮していません。)
また、別の研究では、寝すぎると誘惑に弱くなり、怠け癖がついたり間食が多くなって太りやすくなるという研究もあります。
週末寝溜めなどもなるべく行わず、7〜8時間の睡眠を毎日取るようにしたいですよね。
③適切な睡眠時間は年齢に関係ない
歳を取ると睡眠時間が短くなるようなイメージがありますが、実は、夜遅くまで起きていて朝早く起きる行為は危険です。
睡眠は、あらゆる年齢の脳機能に影響を与えるからです。
今回の研究の被験者である10代〜20代の若者と、90代〜100歳の年配者とで比較すると、寝不足による脳機能の低下はどの年代でも同じでした。
脳機能をベストに保つのであれば、年齢に関係なく7〜8時間睡眠が必要なのです。
④4時間睡眠は脳が老化する
寝不足だと、めまいを感じたり頭がボーッとしたりしますよね。
それはもしかすると、脳が老化しているからなのかもしれません。
1日4時間睡眠の場合、8歳の脳の老化に相当することが分かっています。
一度行っただけで、脳が8歳も老けてしまうのです。恐ろしいですよね。
特に、めまいを感じたり頭がボーッとしたりして、頭の回転が悪くなります。
しかも、たった一晩、4時間睡眠をしただけで、アルツハイマー型認知症の原因の一つである、アミロイドβタンパク質が分泌され、脳に蓄積されてしまいます。
たとえショートスリーパーだとしても、4時間以上は睡眠をとった方が良いのです。
でも、仕事が忙しくてほとんど睡眠を取れない時もありますよね。
そんな時は、昼寝を20分ほどすると良いです。
そうすると、一時的に脳機能が回復します。
ただし、4時間以下の睡眠が慢性的になると、脳の回復が間に合わずに元に戻らなくなる可能性があるので、注意してください。
⑤一晩睡眠時間を増やすだけで回復する
4時間睡眠は脳が老化すると聞いて、焦りや不安を感じたかもしれませんが安心してください。
慢性的に睡眠不足だとしても、一度ぐっすりと眠ることで脳機能が良くなる傾向にあります。
実験では、慢性的に睡眠不足の人が、たった一晩7〜8時間の適切な睡眠を取ることで、認知機能やコミュニケーション能力の向上が見られました。
普段忙しくて睡眠時間を確保できない場合でも、大事な会議やプロジェクトなどの前日は、7〜8時間の睡眠をとったほうが良いのです。
睡眠の質を上げる方法
日中のうちに体と頭を疲れさせる
適切な睡眠時間は7〜8時間ということがわかりましたが、睡眠の質を上げるためにはどうすればよいのでしょうか。
その答えの1つ目が、日中のうちに活発に活動して体と頭を疲れさせることです。
私達は休止モードに入ったり活発モードに入ったりと、1日のうちでリズム(サーカディアンリズムなど)があります。
朝は散歩や細かい作業などをして徐々に目を覚まし、昼前後から夕方は活発に活動し、夜は休息タイム、そして眠りに就くというリズムがベストです。
そのように、人間本来のリズム通りに生活することで、睡眠の質を上げることができるでしょう。
寝起きはセラピーライトを活用する
日中のパフォーマンスを向上できるか否かは、寝起きで決まると言っても過言ではありません。
先程もお伝えしたように、しっかりと睡眠時間を確保しできていたとしても、「あまり眠れなかった」と考えるだけで、脳機能が低下してしまうことがあります。
特に朝起きる時、目覚まし時計などの音で目が覚めると、いくらぐっすり眠っていたとしても、睡眠の質がガクッと落ちてしまいます。
これはなぜかというと、音に反応してコルチゾールなどのストレスホルモンが急激に分泌され、臨戦態勢になるからです。
そこで活用したいのが、「光」です。
太陽の光を浴びて起きるのがベストですが、毎日そういうわけにもいきませんよね。
そのため、セラピーライト(光療法)を使うことをおすすめします。
セラピーライトを目覚まし時計の代わりに使うことで、体内時計が調節され、朝スッキリと目覚めることができるようになるでしょう。
ただし、夜寝る前に使用するのは避けてください。
寝る前に強い光を浴びると、寝付きが悪くなる場合があります。
お風呂のタイミングを決める
就寝前のお風呂は、睡眠の質を上げるのにとても重要です。
湯船に使ったりシャワーを浴びたりすると、一時的に深部体温(内蔵などの体温)が上昇します。
しかしこれは平温ではないため、元の体温に戻そうとして体が冷え、休眠モードに入るのです。
このタイミングを見計らって床に就くと、睡眠の質をグッと上げることができます。
詳しくは、『目覚めスッキリ!睡眠の質を上げるお風呂のベストタイミング』でお伝えしているので、合わせて確認しておきましょう。
まとめ
睡眠に関する多くの研究では、6時間以下を睡眠不足としているようです。
適切な時間はというと、6.5〜7.5時間という研究や、今回のように7〜8時間という研究もあります。
共通して言えることは、寝不足も寝過ぎも良くないということ。
7.5時間前後の睡眠であれば、問題なくパフォーマンスを発揮できると覚えておきましょう。
睡眠の質の向上については、なるべく体内時計通りに生活することです。
朝は自然の光で目を覚まし、軽い運動や細かい作業で頭の回転を良くして、夕方までは活発に活動する、そして夜はリラックスして床に就く…というのがベストですよね。
毎日行うことはなかなか難しいかもしれませんが、4時間睡眠になってしまうと脳が8歳も老化してしまうので、気をつけたいところです。
私もリズムが崩れることは多々ありますが、睡眠時間と睡眠の質の両方を確保し、生活の質を向上するよう、一緒に目指していきましょう。
【睡眠と脳の関係】就眠のベスト時間は年齢に関係なかった まとめ
- 食事の改善、睡眠の時間と質、適度な運動の3つが、生活の質を向上するのに欠かせない
- 18歳〜100歳までの数カ国の10,886人を対象に実験
- 認知機能やメンタルヘルス、コミュニケーション能力などと睡眠時間との関係性について調べた
- 最も適切な睡眠時間は7〜8時間
- 寝過ぎは寝不足と同じ
- 適切な睡眠時間は年齢に関係ない
- 4時間睡眠は脳が老化する
- 一晩睡眠時間を増やすだけで回復する
- 日中のうちに体と頭を疲れさせる
- 寝起きはセラピーライトを活用する
- お風呂のタイミングを決める
参考文献
- https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30212878/
- ブレインメンタル強化大全/樺沢紫苑/2020.9.3/サンクチュアリ出版
- スタンフォード式最高の睡眠/西野精治/2017.3.5/サンマーク出版